2026年から、日本におけるF1中継はフジテレビによる独占配信となり、あわせてこれまで日本では利用できなかった公式配信サービス「F1TV」もスタートします。選択肢が増えたこと自体は歓迎すべきニュースですが、発表された料金を見て「少し高いのでは?」と感じた方も少なくないのではないでしょうか。
実際、海外で提供されているF1TVの価格と比較すると、日本の料金は2〜3倍、国によってはそれ以上の差があり、決して割安とは言えない水準です。
もっとも、F1TVはオンボード映像やチームラジオ、ライブタイミング、テレメトリーデータなど、多彩な機能を備えた公式サービスです。映像とデータを一体で楽しめる点は大きな魅力であり、F1ファンにとって価値のある選択肢であることは間違いありません。
とはいえ、「F1は好きだけれど、毎月の固定費としては少し重い」と感じる方もいるでしょう。そこで本記事では、F1ファンのコミュニティから生まれた無料ツール、F1-DashやFastF1を活用し、ライブタイミングやテレメトリーデータを閲覧・分析する方法を紹介します。
オンボード映像やチームラジオは直感的にレースを楽しめるコンテンツですが、F1の本質はデータにあります。ラップタイムの推移、セクター比較、スピードトラップ、エネルギーマネジメント、数値を読み解くことで、レースの見え方は一段と深まります。ライブタイミングやテレメトリーを理解することこそ、F1をワンランク上の視点で楽しむための鍵です。
F1TVで見られる「データ」とは何か?

F1TVの最大の特徴は、映像配信だけでなく、リアルタイムのライブタイミングや詳細なテレメトリーデータを閲覧できる点にあります。
ライブタイミングでは、各ドライバーのラップタイムやセクタータイム、タイヤ情報、ピットインのタイミング、スピードトラップの計測値などがリアルタイムで更新されます。テレビ中継では一部しか表示されない情報も、一覧で把握できるのが大きな強みです。
さらに一歩踏み込むと、テレメトリーではマシンの挙動を数値で確認できます。たとえば、スロットル開度、ブレーキ入力、ギア選択、速度の推移などです。ドライバーがどこでアクセルを踏み切り、どこでブレーキを残しているのか。どの区間で最高速に達しているのか。そうした操作の痕跡が、グラフとして可視化されます。
現在の Formula 1 は、空力性能やパワーユニットの効率、エネルギーマネジメントが勝敗を左右する極めて高度な技術競技です。ラップタイムの裏側には、必ず数値的な理由があります。
つまり、テレメトリーとは「なぜその結果になったのか」を説明するための材料なのです。
映像はレースを感覚的に楽しむためのものですが、データはレースを理解するためのもの。F1TVが提供している価値の本質は、まさにこの「理解のための情報」にあります。
F1TVの主な機能
- 全セッションのライブ配信・アーカイブ
- 各ドライバーのオンボード映像
- チームラジオ
- ライブタイミング
- テレメトリーデータ表示
- マルチビュー機能
詳しくは、F1TV公式ページをご覧ください。
無料でテレメトリーを解析する方法

F1TVが提供しているライブタイミングやテレメトリー機能は魅力的ですが、実はデータそのものを解析するだけであれば、無料で始める方法も存在します。
これらはF1ファンの開発者によって生み出され、オープンソースとして公開されているツールです。
ブラウザで使えるF1-Dash
F1-Dash は、2023年にF1ファンの開発者によってスタートしたホビープロジェクトです。F1のリアルタイム・テレメトリーとライブタイミングを表示できるWebダッシュボードで、レースを「データ視点」で楽しみたいファンのために開発されました。
ドライバーのポジション、ラップタイム、セクタータイムといった基本情報をリアルタイムで確認できるため、国際映像だけでは把握しきれない位置関係やタイム差を、数値ベースで補完することができます。映像と組み合わせて活用することで、レースの展開をより立体的に理解できるようになります。

また、ブラウザ上で動作するため、PCやタブレットでの視聴とも相性が良く、2画面表示にしたり、デバイスを分けて利用したりといった使い方ができるのも大きなメリットです。
公式ツールほどの機能は備えていないものの、「無料で活用できるデータツール」として考えれば、十分実用的な選択肢と言えるでしょう。
FastF1でデータを取得・可視化する
続いて紹介するのは、FastF1です。FastF1はPythonで利用できるライブラリで、公式ライブタイミングのデータを取得し、ラップタイムやセクタータイム、速度、スロットル開度、ブレーキ入力などのテレメトリーデータを可視化できます。
たとえば、以下のような分析が可能です。
- 2人のドライバーのアタックラップ比較
- セクターごとのタイム差の可視化
- 速度トレースの重ね合わせ
- タイヤごとのラップタイム推移
- ピット戦略のタイムロス分析

コードは数行でデータを取得でき、matplotlibなどを使えばグラフとして出力できます。過去のセッションも扱えるため、歴史的なレースや印象的な予選ラップを後から検証することも可能です。


ブラウザで手軽に使えるF1Dashに対し、FastF1は「自分で分析する」ためのツールです。プログラミングの基礎知識は必要になりますが、その分、自由度は非常に高く、思い通りの視点でレースを掘り下げることができます。
また、現在は生成AIの活用によって、コードをゼロからすべて自力で書く時代ではなくなりつつあります。重要なのは、どのような分析をしたいのかを考え、適切に指示を出せることです。Pythonは汎用性も高く、F1分析を入り口に学び始めるのも一つの選択肢でしょう。

ライブタイミングやテレメトリーデータを表示する専用端末として使うなら、ハイエンドモデルは必ずしも必要ありません。ブラウザが快適に動作し、長時間の視聴に耐えられれば十分です。
Lenovo Tab Oneは、派手な高性能機ではありませんが、Webブラウジングや動画視聴には十分なスペックを備えており、F1Dashの表示やライブタイミング確認といった用途にはちょうどいいバランスのモデルです。コストパフォーマンスを重視する方にとって、導入しやすい選択肢と言えるでしょう。
無料ツールは違法ではないのか?

「公式データを取得しているなら、違法なのでは?」と疑問に思う方もいるかもしれません。
まず整理しておきたいのは、ラップタイムやセクタータイム、速度といった数値そのものは「事実」であるという点です。スポーツの結果やタイムのような客観的事実それ自体には、一般的に著作権は発生しないとされています。
一方で、公式サイトや公式アプリのUIデザイン、映像、グラフィック表現などは著作物にあたります。これらをそのままコピーして再配布すれば、著作権侵害となる可能性があります。
では、FastF1 や F1Dash のようなツールは何をしているのでしょうか。
これらのツールは、公式配信で用いられているライブタイミングのデータを解析し、独自の形式で再構成・可視化しています。つまり、公式のデザインや映像をコピーしているわけではなく、数値データを独自のグラフやインターフェースとして表現しているのです。
もちろん、データの取得方法や利用規約との関係といった技術的・契約的な論点は別に存在します。ただし少なくとも、「事実である数値を独自に加工・可視化する」という行為そのものは、著作物の複製とは性質が異なるものと考えられています。
また、利用規約やデータ配信の仕様が変更されれば、状況が変わる可能性もあります。実際に、一部のデータがサブスクリプション向けに制限されたことにより、機能を縮小しているツールもあります。
こうした背景を踏まえると、これらの無料ツールは、公式の権利を侵害することを目的としたものではなく、公開されているデータを技術的に読み解き、別の形で表現しているプロジェクトだと理解するのが適切でしょう。
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まとめ
2026年から日本でもF1TVが正式に展開され、オンボード映像やチームラジオ、詳細なライブタイミングが公式に利用できるようになります。サービスとしての完成度は高く、すべてを一つで完結させたい人にとっては魅力的な選択肢でしょう。
一方で、価格に見合う価値があるかどうかは、人によって異なります。
映像や音声を中心に楽しみたいなら公式サービスが最適です。しかし、「データを深く読み解きたい」「ラップ比較をしてみたい」「戦略を分析したい」という視点であれば、無料のコミュニティツールでも十分に楽しむことができます。
どちらも、F1を「見る」から「読み解く」へと引き上げてくれる存在です。
F1の本質は、華やかな映像の裏側にある膨大なデータにあります。ラップタイムの0.1秒、セクターごとの挙動、タイヤごとのペース変化。それらを理解できたとき、レースの見え方は大きく変わります。
高額なサブスクリプションを契約するかどうかは、最終的には個人の選択です。ただ一つ確かなのは、F1を深く楽しむ方法は、決して一つではないということです。
データを味方につければ、F1はもっと面白くなります。
▶︎こちらの記事では、F1の視聴方法を詳しく解説しています。
【画像クレジット】
アイキャッチ画像:Ferrari by Leslin_Liu / Pixabay



