2026年からF1は、マシン構造・パワーユニット・エアロダイナミクス・燃料のすべてが刷新される「新時代」に突入します。FIAが正式発表した2026年F1新レギュレーションは、軽量化・電動化の強化・アクティブエアロの導入・安全性の向上 を柱とした大規模なルール変更です。
特に注目されている主な変更点は次のとおりです。
- シャシー軽量化(約30kg減)
- 電動化比率の大幅アップ(MGU-K出力が大幅増加)
- ストレートモード / コーナーモード と呼ばれる新アクティブエアロの採用
- 1秒以内で発動可能な オーバーテイクモード(追加バッテリーパワーシステム)
- より強靭な構造と強化されたクラッシュテストによる安全性向上
- 完全なサステナブル燃料への移行
といった、走りの根本を変える内容です。
この記事では、FIA公式発表をもとに、2026年F1新レギュレーションのポイントを初心者でも理解できるように、わかりやすく解説します。
F1公式サイト(英語):FIA UNVEILS FORMULA 1 REGULATIONS FOR 2026 AND BEYOND FEATURING MORE AGILE CARS AND ACTIVE AERODYNAMICS
F1公式Youtubeチャンネル(英語):Everything You Need To Know About the Formula 1 2026 Regulations
2026年F1新レギュレーションとは?変更点まとめ

2026年シーズンから、F1はテクニカルレギュレーションが大幅に変更されます。今回の変更は、軽量化・省エネ化・競争力の向上・オーバーテイク促進 が大きなテーマで、F1の走り方自体が変わる可能性があります。
車体の軽量化とスリム化
2026年マシンは、2022年仕様と比べて 約30kgの軽量化 が実施されます。これまで「F1マシンが重すぎる」という批判が続いていましたが、軽量化により運転性能の改善が期待されます。
- 最低重量:798kg → 768kg(マシン+ドライバー)
- ホイールベース:3600mm → 3400mm
- 横幅:2000mm → 1900mm
- ダウンフォースが30%減少しドラッグ(空気抵抗)も55%減少する。
- 2022年に導入された 18インチホイール は維持し、フロントタイヤは25mm細くなり、リアタイヤは30mm細くなる。
走りの特徴も変化
- 車体の軽量化とスリム化により、機敏性やドライバビリティが向上。
- ドラッグ(空気抵抗)の減少によりストレート速度は向上し、逆にダウンフォース低下の影響でコーナリング速度は遅くなるとみられる。
エンジンの電動化比率が大幅アップ(ハイブリッドシステムが強化)
2026年のパワーユニット(PU)は、電動化の比率が大きく引き上げられた新構造へと進化します。これまでよりも MGU-K(回生システム)の出力が劇的に増加 し、逆にエンジン(内燃機関)の比率は縮小します。
その結果、パワーユニット全体の約50%が電力で走る時代へ と移行します。
出力比較:2022年仕様 → 2026年仕様
| 項目 | 2022 Power Unit | 2026 Power Unit |
|---|---|---|
| Power Unit(エンジン形式) | 1600cc V6 single turbo | 1600cc V6 single turbo |
| ICE Power Output(エンジン出力) | 560KW(751hp) | 400KW(536hp) |
| Electrical Power Output(電力出力) | 150KW(201hp) | 350KW(469hp) |
電力出力が150kW → 350kWへと大幅増強されるため、レース中の「どこで電力を使うか」がこれまで以上に戦略の核心となります。
さらに、前のマシンに1秒以内で接近すると追加のバッテリーパワーを解放できる新システム(オーバーテイクモード)が導入され、これにより DRSに代わる新しい「オーバーテイク」手段として期待されています。この変更は、環境性能の向上だけでなく、オーバーテイクを増やすためのレース改善策としても大きな意味を持ちます。
MGU-H(排気熱エネルギー回生装置)の廃止
2026年PUの大きな変更点として、MGU-H が完全に廃止されます。
MGU-H は、2014年のハイブリッド時代導入から使用されてきた装置で、排気の熱エネルギーを回生・発電し、ターボ回転にも介入できる高度なシステムでした。しかし以下の理由から採用終了となります。
- 構造が極めて複雑で開発コストが高い
- 市販車への転用(技術的メリット)が少ない
- PU開発参入のハードルを下げるための調整
この廃止により、開発の複雑性は軽減され、新規メーカーにとって参入しやすいPU規定へと変わります。
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2026年の新世代F1エンジンサウンドと、歴代F1サウンドの違いについては、以下の記事で詳しくまとめています。
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空力コンセプトが変更「ストレートモード/コーナーモード」― 新アクティブエアロの採用
2026年の大きな特徴が、フロントウイングとリアウイングを「走行中に切り替えられる」新アクティブエアロ(ストレートモード/コーナーモード) です。これは従来DRSの進化版とも言える仕組みで、ドライバーが状況に応じて空力モードを変えることで、ストレート速度とコーナリング性能を最適化します。
※Xモード/Zモードという呼称は、分かりにくさを避けるため、現在は廃止されています。
コーナーモード(通常時/ダウンフォースモード)
- 通常走行で使用される標準モード
- フロントウイングとリアウイングは高いダウンフォースを発生させる角度に設定
- コーナリング性能を最大化し、バトル時も安定した走行が可能
ストレートモード(低ドラッグモード)
ストレートモードは、ドライバーが手動で選択できる低ドラッグ(空気抵抗低減)モードです。フロントウイングとリアウイングの角度が変化し、空気抵抗が大幅に低減します。
このシステムはドライバーによって起動され、トラックの特定の部分で利用できます。FIAは、現在の議論に基づいて、3秒を超える直線で利用可能になると予想していると述べています。
- ドライバーが手動で選択できる低ドラッグモード
- フロントウイングとリアウイングの角度が変化し、空気抵抗を大幅に低減
- ドラッグを最小化して直線速度を最大化
- 特定の直線区間でのみ使用可能(FIAは3秒以上続く直線を想定)
- 濡れた路面では使用禁止の可能性あり
- ドライバー操作やブレーキ操作で自動的にコーナーモードへ復帰
このストレートモード/コーナーモードの使い分けにより、レース戦略やドライバー技術の重要性がさらに増し、2026年のF1ではこれまで以上に高度な駆け引きと戦略性が求められることになります。
安全性の強化(衝撃吸収・剛性の大幅アップ)
2026年レギュレーションでは、マシンの衝撃吸収構造と安全基準が大きく強化されます。特に近年の事故例を踏まえ、FIAは以下の点を重点的に改善しました。
- フロントインパクト構造(FIS)の改良
初期衝突でのエネルギー吸収し、2回目の衝突でもモノコック(生存セル)を保護 - サイド侵入保護の強化
燃料タンク付近のサイド保護が2倍以上 に強化されています。これらは安全性向上のための大幅アップデートでありながら、FIAによると「重量増なし」で実現されています。 - ロールフープ(転倒保護)の強化
ロールフープの耐荷重基準が引き上げられ、16G → 20G へ強化、テスト荷重は 26kN → 167kN へ大幅増となり、湯より高い衝撃にも耐えられる設計となりました。 - ERS状態を示す安全ライトの追加
横方向の安全ライトが新設され、コース上で停止したマシンの ERS(回生システム)状態を外部から確認可能とし、マーシャルやドライバーの二次被害を防ぐという重要な役割を担います。
サステナブル燃料の移行
2026年からF1は、100%サステナブル燃料へと完全移行します。これにより、化石由来の燃料依存を減らし、カーボンニュートラルを目指すF1の長期戦略が大きく前進します。
この燃料は、廃棄物・バイオ資源・合成燃料(e-fuel)などを組み合わせて製造され、走行性能を維持しながら環境負荷を大幅に削減できる点が特徴です。
なお、このサステナブル燃料はすでにF2をはじめとする下位カテゴリーで先行導入されており、実走データが蓄積されているため、F1でも大きな性能低下やトラブルなく移行できると見られています。
技術進化・環境配慮・コスト削減を両立するこの取り組みは、F1だけでなく市販車技術への波及も期待されており、2026年レギュレーションの中でも特に象徴的な変更点です。
2026年に新規参入・復帰するメーカー
2026年は、F1のパワーユニット(PU)レギュレーションが大幅に刷新される節目の年です。このタイミングに合わせて 複数の自動車メーカーが新規参入・復帰 を発表しており、F1の勢力図が大きく変わる可能性があります。
特に「電動化の拡大」「コストキャップ導入」によって参入ハードルが下がったことで、F1がメーカーにとって魅力的な技術開発フィールドとなった点が背景にあります。
アウディ(Audi)

2026年、ザウバー(現:Stake F1 Team)を買収し、フルワークス体制(works manufacturer) として参入します。
アウディは2026年の参戦に向けて、ドイツ・ノイブルクにある専用施設で独自のパワーユニット開発を本格化。すでに数百名規模のエンジニアリングチームを投入しています。
ドイツメーカーの本格参戦ということで、ブランド力・技術力の面からもF1市場全体を活性化させる存在として期待されています。
キャデラック (CADILLAC)

2026年シーズンから、キャデラックは 11番目の新チームとして公式にF1へ参戦します。GM(General Motors)傘下のブランドとして、完全な「新規チーム」としてグリッドに加わる形です。
キャデラックはTWG Motorsportsと協力しながら、すでにアメリカ国内の開発拠点で専用チームを編成。シャシー設計、空力開発、コンポーネント製造、シミュレーション部門などに300名規模のスタッフを投入し、車体開発をゼロから進めている唯一の新規参入チームとなります。パワーユニットは当面 フェラーリ製PUを使用 しますが、GMは将来的に独自パワーユニットの開発も視野に入れており、10年以内のフルワークス化 を目標に掲げています。
フォード(Ford)

フォードは レッドブル・パワートレインズ(RBPT)と提携し、2026年からF1のパワーユニット(PU)メーカーとして復帰 します。フォードが最後にF1でPUを供給したのは2004年で、約20年ぶりの復帰となります。
- Red Bull Powertrains × Ford の共同開発体制
レッドブルの新Milton Keynes施設を拠点に共同でパワーユニットを開発。 - 電動化ユニット(MGU-K)を中心とした技術支援
電動化比率が大幅に高まる2026年PUで、フォードは電動化技術の強みを提供。 - 北米市場のF1人気と好相性
ラスベガス、マイアミ、オースティンと、アメリカでのF1人気が急上昇しており、アメリカ大手メーカーの復帰はマーケティング面でも大きな追い風。
アメリカ大手メーカーの復帰により、F1は北米でさらに注目度が上昇しています。
ホンダ(Honda)

アストンマーティンと提携し、2026年から再びフルワークスとしてパワーユニット(PU)供給を行います。ホンダは2021年シーズンをもってF1から撤退しましたが、2026年のレギュレーション変更を機に復帰を決断しました。
ホンダ&アストンマーティンのタッグは、再びトップ争いに加わる可能性が高いと見られており、F1ファンから最も注目されている復帰のひとつです。
2026年は新規参入メーカーと既存勢の開発競争が激化するため、シーズン全体の盛り上がりにもつながる重要なポイントになるでしょう。
2026年F1レギュレーションを巡る最新の技術論争

2026年のF1パワーユニットは電動化が大きく進み、内燃機関(ICE)の出力比率は引き下げられます。その一方で、ICEには限られた条件下でいかに高い燃焼効率を引き出すかが、依然として重要な技術テーマとして残されています。
その中で注目されているのが、圧縮比(コンプレッションレシオ)を巡るルール解釈問題です。
内燃機関の効率を左右する「圧縮比」制限とは
2026年レギュレーションでは、内燃機関の圧縮比は最大18:1→16:1に制限されます。圧縮比は燃焼効率や熱効率に直結する要素で、数値が高いほどエンジン性能面では有利になります。
この制限は、新規参入メーカーの開発負担を抑える目的で導入されました。
メルセデスとレッドブルが先行する「圧縮比解釈」
しかし、この圧縮比制限を巡っては、すでにF1界で技術的な解釈を巡る議論が起きています。
FIAの規則では、圧縮比の測定はエンジン停止・常温状態で行われると定義されています。そのため、実際の走行時のような高温状態では、金属部品の熱膨張によって実質的な圧縮比が変化する余地があります。
この熱膨張の特性を前提に、高温時に圧縮比が高くなる設計をメルセデスとレッドブルが採用しているのではないかと見られています。
現時点では、両チームがこの解釈を前提とした設計で先行していると受け取られており、FIAもまた、検査が静止・常温状態で行われる限り、この解釈を容認していると見なされています。
フェラーリ・ホンダ・アウディが疑義を申し立て
一方で、フェラーリ、ホンダ、アウディといったPUメーカーは、この解釈に疑義を申し立てています。
彼らは「測定条件だけでなく、走行中もルールの精神に沿うべきだ」と主張しており、この圧縮比の扱いは、2026年F1の勢力図を左右しかねない重要な論点となっています。
もう一つの焦点 ― 電力マネジメントが生む「アンチレーシング」問題
2026年レギュレーションでもう一つ大きな論点となっているのが、電力マネジメントの問題です。
新世代パワーユニットでは、内燃機関(ICE)の出力比率が下がる一方で、MGU-Kの出力は大幅に拡大され、ICEと電動出力がおよそ50:50に近い構成になります。これはF1史上でも前例のない電動化比率です。
しかし、この「電動化の強化」が、レースの本質そのものを変えてしまうのではないかという懸念が広がっています。
バッテリーのエネルギー放出量には厳しい制限があり、回生できるエネルギー量にも上限があります。その結果、ドライバーはストレートを常にフルスロットルで走れるとは限らず、エネルギーを温存するために「リフト・アンド・コースト(早めにアクセルを戻して惰性走行する)」をせざるを得ない状態にあります。
Max Verstappen は、2026年規則に対し、エネルギー管理が過度に支配的になることで「ほとんどフォーミュラEのようだ」と不満を示し、「フルスロットルで戦うレースではなくなる」といった趣旨のコメントを残しています。いわゆる「アンチレーシング」という強い表現も使われました。
圧縮比を巡る解釈問題が「ICE効率の最適化」を巡る技術論争だとすれば、電力マネジメント問題は「F1は何を競うカテゴリーなのか」という根本的な問いに直結します。
2026年の勢力図は、単にどのメーカーが高効率エンジンを作れるかだけではなく、どのチームがこの新しいエネルギー管理ゲームを最も巧みに設計・運用できるかによっても左右されることになりそうです。
2026年はどんなレースになる?

2026年の新レギュレーション導入により、F1マシンの動きやレース展開は大きく変わると予想されています。
Sky Sports によると、レーシングブルズの アイザック・ハジャー はシミュレーターで2026年仕様マシンを走らせた際、「フィーリングはF2に近かった」とコメントしました。ただし、それがラップタイムのことなのか、ハンドリングの特徴なのかまでは明言していません。
一方、FIAシングルシーター・ディレクターの ニコラス・トンボジス はこの「F2に近い」という表現について否定的な姿勢を示しています。
「ラップタイムは2026年マシンの方が現行より約1〜2秒遅くなる程度で、F2レベルまで下がるわけではない。サーキットやコンディションで差は変わる」
と説明しており、F1としてのパフォーマンスは維持される見込みです。
レースはこう変わる(予想)
- オーバーテイクが増える可能性が高い
車体が軽量化され、空力依存度が下がるため、接近戦がしやすくなる。 - 電力マネジメントが勝負の鍵に
電動化比率が上がることで、ドライバーのエネルギー配分が戦略に直結。 - アクティブエアロ(ストレートモード/コーナーモード)が新たな駆け引きを生む
ストレートとコーナーで空力特性を切り替える 「二面性」 が戦略として重要に。 - 車体がスリム化して、バトルの機会が増加
軽く、取り回しの良いマシンとなることで、コース上での動きが活発になる。
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大きなルール変更が行われる2026年のF1。では、その影響を受けて勢力図はどのように変わるのでしょうか。過去データをもとに、AIを使ってコンストラクターズランキングを予測してみました。
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─── あわせて読みたい ───
2026年のF1をより深く楽しみたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
公式配信から無料視聴まで、F1を楽しむ方法をわかりやすく解説しています⬇️
全レースを日本時間で一覧化。観戦計画に便利なスケジュールはこちら⬇️
全ドライバーを一覧で紹介。新体制・新規参入チームも含めて解説しています⬇️
まとめ
2026年のF1は、パワーユニット、空力、車体サイズ、燃料といった主要要素がすべて刷新される、「大改革のシーズン」になります。マシンはより軽量でスリムになり、空気抵抗を抑えつつ電動化率は50%へと大幅に増加。さらに 100%サステナブル燃料の導入 によって、F1はより環境に配慮した次世代レースへと進化します。
レース面では、アクティブエアロ(ストレートモード/コーナーモード) の切り替えや 電力マネジメント が勝敗を左右するなど、これまで以上にドライバーの戦略性が問われる1年になる見込みです。また、空力の簡素化と車体のスリム化により オーバーテイクの増加 も期待され、レースの迫力はさらに高まりそうです。
さらに、アウディやキャデラックの参入 により、新規勢と既存勢の実力差がどれほど開くのかも大きな焦点。未知数な部分が多いだけに、勢力図が大きく揺れ動く可能性があります。
2025年はマクラーレンとレッドブルがタイトルを争いましたが、2026年はまったく違う構図になることも十分考えられます。
まさに、F1の歴史における 「新章の幕開け」 と呼ぶにふさわしいシーズンになるでしょう。




