日本のF1TVはなぜ高い?海外価格と比較して見えた構造的な理由

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日本のF1TVは、他の国と比べると明らかに高い価格設定になっています。なぜ日本だけがこうした状況になっているのか、海外の事例と比較しながら整理していきます。

結論から言えば、日本の価格が割高に見えるのは偶然ではありません。市場規模、放映権契約、販売モデルの違いが、そのまま料金に反映されている可能性があります。

実際にアメリカやオランダ、インドなどのF1TV料金と比較すると、日本のF1TV Pro / Premiumは高水準にあり、単なる為替の差では説明できない差があります。

もちろん、放映権ビジネスは複雑で、単純な「高い・安い」で語れるものではありません。それでも、現状の日本の価格設計は、新規ファンの獲得よりも既存ファンからの収益に依存している側面があると考えられます。この構造が続く限り、日本市場を大きく広げるのは容易ではないでしょう。

本記事では、実際の価格比較をもとに、日本のF1TVがなぜ高く設定されているのか、その構造を整理します。特定の企業を批判することが目的ではなく、日本のF1市場が今後も健全に成長していくために、価格と構造を客観的に理解する材料を提供することが目的です。

F1ファンにとっても、情報を正しく把握したうえで視聴方法を選ぶことが重要な時代になっています。

日本のF1TV Pro / Premiumの価格

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まず結論から言うと、日本のF1TVの価格差は感覚的なものではなく、数字として明確に存在しています

F1 TV プラン🇯🇵 日本(FOD)🇺🇸 アメリカ(Apple TV)
($1=155円)
🇳🇱 オランダ
(€1=185円)
🇮🇳 インド
($1=155円)
Pro 月額¥4,900€7.49
(約 ¥1,386)
$3.99
(約 ¥618)
Pro 年額¥58,800€59.99
(約 ¥11,098)
$29.99
(約 ¥4,648)
Premium 月額¥5,900$12.99
(約 ¥2,013)
€11.99
(約 ¥2,218)
$4.99
(約 ¥773)
Premium 年額¥70,800$99
(約 ¥15,345)
€89.99
(約 ¥16,648)
$39.99
(約 ¥6,198)
※為替レートにより日本円換算は変動します。

Premiumプランの年額を比較すると、

  • 🇯🇵 日本:70,800円
  • 🇺🇸 アメリカ:約15,345円(約4.6倍)
  • 🇳🇱 オランダ:約16,648円(約4.2倍)
  • 🇮🇳 インド:約6,198円(約11倍)

Proプランでも同様。

  • 🇯🇵 日本:58,800円
  • 🇳🇱 オランダ:約11,098円(約5倍)
  • 🇮🇳 インド:約4,648円(約12倍)

為替の影響はすでに換算済みであり、単なる通貨差では説明できません。つまり、日本の価格は「少し高い」のではなく、構造的に高い水準にあることがわかります。

では、なぜここまでの差が生まれるのか。次のパートでは、その背景にある構造を整理していきます。

なぜ日本だけが高いのか(考察)

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アメリカ市場は140万人で回収可能

2026年から、AppleはF1と5年間の独占契約を結んだと報じられています。公式発表ではありませんが、放映権料は年間約1.4億ドル(約217億円)とも言われています。

数字だけを見るとかなり大きく感じますが、少し冷静に計算してみると、意外と「無謀」というほどでもないことが分かります。

Apple TVの年間プランは99ドル(約15,345円)です。
単純計算すると、1.4億ドル ÷ 99ドル ≒ 約140万人。

つまり、年間で約140万人が加入すれば、理論上は放映権料を回収できる計算になります。月額12.99ドルで考えても、年間換算で約90万人規模です。アメリカの人口は約3.4億人、Netflixの加入者は6,000万〜8,000万人規模とされているため、この数字は決して非現実的ではありません。

さらに重要なのはコスト構造です。F1の配信自体はAppleが制作するわけではなく、F1公式のF1TVプラットフォームを利用する形になります。つまり、Appleは新たに大規模な制作体制を整える必要がありません。

  • 既存のApple TV加入者は追加料金なしでF1 TV Premiumを利用できる
  • F1ファンはApple TVに入れば、映画やドラマも見られる
  • AppleはF1関連映画も展開していて、コンテンツ同士の相乗効果も期待できる

このように、F1単体で黒字化を目指すのではなく、Apple TV全体の価値を押し上げるための一部としてF1を組み込んでいる構造になっています。新規加入者の獲得だけでなく、既存加入者の満足度向上や解約防止にもつながる仕組みです。

こうして見ると、単に「高額な放映権料を払っている」というよりも、市場拡大とサービス価値向上を前提にした合理的な設計であることが理解できます。

もちろん、このモデルが成功するかどうかはまだ分かりません。しかし少なくとも、数字と構造は非常に整合性のあるものになっています。

日本では価格が高く見える理由

ここまでアメリカの事例を見てきましたが、「日本だけ異常に高い」と単純に言い切るのは、少し冷静に考える必要があります。実際には、金額そのものよりも料金の構造に原因があるように見えます。

① FOD加入者はそのままではF1を見られない

まず注目すべきポイントはここです。FODプレミアムの既存加入者は、そのままではF1を視聴できません。FODプレミアムとFODのF1プランは完全に別物で、FOD加入者が「ついでにF1を見る」という構造にはなっていないのです。

対照的にアメリカでは、Apple TVの既存加入者は追加料金なしでF1 TV Premiumを利用できます。この違いは、新規視聴者獲得において大きな差になります。

② F1だけ見たい人にとっての「余分なコスト」

次に、F1目当てで加入する人の立場で考えます。FODのF1プランには、FODプレミアム(月額1,320円)のコンテンツが強制的に付帯します。しかし、FODの他のコンテンツを利用しない人にとって、この1,320円は余計な支出と感じる可能性があります。

FOD F1プランの価格は以下の通りです。

  • スターター:3,880円
  • プロ:4,900円
  • チャンピオン:5,900円

この価格を分解すると、概ね以下のようになります。

  • FODプレミアム:1,320円
  • フジテレビ制作のF1中継部分:2,560円
  • F1 TV Pro / Premium追加分:1,020円 または 2,020円

こうして見ると、F1 TVの追加料金そのものは、為替換算ベースでは海外と大きな差はありません。問題は、抱き合わせ部分を外せないことです。これによって、体感としての価格が一気に高く感じられます。さらに、年間割引プランが用意されていないことも、価格の割高感を強める要因となっています。

③ フジテレビの「守らなければいけない構造」

そしてもう一つ、フジテレビ特有の事情があります。フジテレビには、CS放送「フジテレビNEXT」と配信サービス「FOD」という二つのビジネスがあります。

もしFODでF1を思い切って安く出せば、CS契約者が一気にFODへ移る可能性があります。それは既存収益に直撃します。だからこそ、極端な価格差はつけにくい。大胆な値下げも難しい。

結果として、市場拡大よりも既存ビジネスの維持を優先せざるを得ない構造になっているのではないかと推測できます。

じゃあフジテレビのF1視聴料は適正なのか?

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ここからは少し仮定の話になりますが、アメリカのF1放映権料を参考に、日本での価格の妥当性を考えてみます。

まず、アメリカでは2026年から5年間、AppleがF1と独占契約を結び、放映権料は年間1.4億ドル(約217億円)と報じられています。アメリカの人口は約3.4億人ですので、単純に人口比で計算すると、日本での放映権料は約76〜80億円程度と推測できます。

ただし、日本の場合は言語の違いから、アメリカのようにF1TVをそのまま提供することはできません。そのため、FODでの日本語実況や配信にかかる制作費・配信費も考慮する必要があります。実際の制作コストは公表されていませんが、概算で10〜15億円程度と想定すると、放映権料+制作費の合計で90〜95億円程度のコストが必要になると考えられます。

必要加入者数の試算

この95億円をFODで回収すると仮定した場合、プランごとの必要加入者数は以下の通りです。

  • スターター(年額46,560円) 95億÷46,560≈20.4万人
  • チャンピオン(年額70,800円)95億÷70,800≈13.4万人

実際には、F1の視聴方法はFODの3つのプランに加え、フジテレビNEXT(CS)も存在するため複雑ですが、分かりやすくスターターとチャンピオンで95億円を回収する場合の目安として試算しました。ここでは13万人から20万人程度の加入者が必要と考えます。

鈴鹿のF1来場者数との比較

鈴鹿サーキットの2025年F1来場者数は26万6千人と報告されています。しかし、この数字は3日間の来場者数を合算したもので、複数日訪れた人も重複カウントされています。決勝日の来場者数が11万5千人であることから、ユニーク来場者はおよそ10〜12万人程度と推測できます。

この層は、F1に熱心なコアファンであり、多少料金が高くても確実に加入してくれる可能性が高いです。さらに、コア層に加えてライト層や新規視聴者の加入を見込むと、フジテレビが加入者20万人程度を想定して価格設定している可能性も十分に考えられます。こう考えると、料金自体にはある程度の妥当性があると理解できます。

角田裕毅のシート喪失

おそらく、フジテレビがF1の放映権契約を進めていた段階では、角田裕毅の2026年以降のシートは未確定であったと推測されます。リザーブ降格が決まったのは、最終戦アブダビの直前です。唯一の日本人F1ドライバーのシート喪失は、ライト層のファンの加入者見込みに影響を与えたと考えられます。

角田は日本でF1ファンを増やす起爆剤のひとつでもあり、そのシート喪失は視聴者数への影響を避けられない要素でした。その結果、フジテレビは価格を下げて新規加入者を積極的に取りにいくよりも、既存加入者やコア層を確実に守る「守りの価格設定」を選択せざるを得なかったとも考えられます。

▶︎こちらの記事では、角田裕毅がリザーブに降格した理由を、データをもとに詳しく解説しています。

フジテレビの構造的な特徴

つまり、日本のF1視聴料が「高く見える」のは、単純に海外と比べているからではなく、既存の仕組みを壊さない設計が背景にあるためです。

  • FODとCSを両立させ、既存のCS加入者やFODプレミアム加入者を守る
  • 少人数でもコストを回収できるように価格設定

こうした構造の違いが、「日本は高い」と感じさせる本質かもしれません。ただし、この設計だと、フジテレビが地上波等でF1をアピールしても、新規加入者がどれだけ増えるかは不透明です。CSやFODの料金プランも複雑で分かりにくく、月額料金も他のサブスクサービスと比べると高めです。Apple TVのように客観的に見ても、戦略が合理的でポジティブには映らない側面があります。

さらに問題なのは、この料金プランが誰のためになっているのかという点です。高価格プランで新規ファンの入り口を狭めることは、大きな機会損失になります。これはF1ファンやフジテレビ、FOMにとっても、将来的にはマイナスです。

思うように加入者が増えなければ、サブスク料金の値上げという選択肢にもなり得ます。しかし、これはすでにDAZNでの事例からも明らかな通り、一時的な解決策にしかならず、解約が増えると結局破綻に向かう可能性が高くなります。

▶︎こちらの記事では、F1公式配信の視聴方法を詳しく解説しています。

まとめ:日本のF1視聴料と今後の課題(考察)

ここまで整理してきたように、日本のF1TV Pro / Premiumが高く見えるのは、背景にFODとCSという既存ビジネスの構造や、角田裕毅のシート喪失によるライト層加入の不確実性など、複数の要因が影響している可能性があります。

試算上、FODで95億円程度を回収する場合、必要加入者数は13万人〜20万人程度。鈴鹿F1の来場者数の規模とほぼ一致しており、コア層からの加入は一定程度見込めると考えられます。こう考えると、料金設定には一定の合理性があるようにも見えます。

一方で、新規加入者の拡大やライト層の取り込みについてはまだ不透明です。現状の抱き合わせや月額のみの料金体系は、海外の事例と比べると柔軟性に欠ける印象があります。

今後、日本のF1市場を広げていくには、年間プランの導入や既存サービスとの組み合わせの柔軟化などが、有効な手段になり得るのではないかと考えられます。単純な価格の引き下げではなく、加入者にとって選びやすく入りやすい構造を作ることが、将来的な視聴者拡大につながるかもしれません。

結局のところ、日本のF1視聴料が高く感じられるのは、既存構造を守ることを優先した設計と、料金体系の複雑さが影響している可能性があります。この構造の見直しが、新しいファンを取り込むカギになるかもしれない、というのが考察としての結論です。

【画像クレジット】

アイキャッチ画像:Ferrari by Leslin_Liu / Pixabay

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